飲酒後、体調が回復したように感じても、アルコールはまだ体内に残っているかもしれません。体からアルコールが抜けるまでには思いのほか時間がかかり、仮眠を取ったからといって安全運転ができる状態にはなりません。
酒気帯び運転として検挙されるのは血液1ミリリットルあたりのアルコール量が0.3mg以上又は呼気1リットルあたりのアルコール量が0.15mg以上の場合ですが、それ未満でも運転能力に影響が出ることがわかっています。そのため、一滴でも飲酒したら、絶対に運転してはいけません。
本記事では、「アルコールが抜けるまでどのくらいの時間がかかるのか」について、具体例を用いて詳しく解説します。
飲酒運転の危険性
飲酒運転は、わずかな量のアルコールでも重大な事故につながる危険性があります。アルコールには麻痺作用があり、脳の機能に直接影響を与えるため、運転に必要な判断力や反応速度が著しく低下してしまうからです。
特に注意すべきなのは、「酒気帯び運転」の基準(血中アルコール濃度0.3mg/ml(0.03%)/呼気中のアルコール濃度0.15mg/l)よりも低い濃度から、運転能力への影響が現れ始めるという点です。血中アルコール濃度0.02%では多方面への注意力低下や反応時間の遅れが、0.01%未満でも集中力の低下が確認されています。
集中力が下がる | 0.01%未満 |
---|---|
多方面への注意力が向かなくなる | 0.02% |
反応時間が遅れる | 0.02% |
トラッキング技能が阻害される | 0.02% |
ハンドル操作がうまくできなくなる | 0.03% |
視覚機能が阻害される | 0.04% |
規制を無視し始める | 0.05% |
「少しなら大丈夫」という考えは非常に危険です。安全運転のためには、アルコールが体内から完全に抜けるまでの時間を正しく理解しておくのが重要です。
アルコールが体内から抜けるまでに何時間かかる?
飲酒運転を防ぐためには、アルコールが体から完全に抜けるまでの時間を正確に把握することが重要です。しかし、その時間は飲酒量や酒の種類だけでなく、個人の体質や体調によっても大きく変わってきます。
そこで、まずは時間を計算する上で必要となる基礎知識を見ていきましょう。
純アルコール量の計算方法

アルコールが体に与える影響を正確に知るためには、飲んだお酒の量だけでなく、その中に含まれる純アルコール量を把握することが重要です。例えば同じ500mlでも、ビールと焼酎では含まれる純アルコール量が大きく異なります。
純アルコール量は、お酒のラベルに記載されているアルコール度数(体積パーセント)を使って計算できます。計算式は以下の通りです。
お酒の量(ml)× アルコール度数(%)÷ 100 × 0.8(アルコールの比重)= 純アルコール量(g)
例えば、アルコール度数5%のビール500mlなら計算式は以下の通りです。
500 × 5 ÷ 100 × 0.8 = 20g
最近では、メーカーのWebサイトで商品ごとの純アルコール量を確認することもできます。
飲酒量の目安となる「1ドリンク」「1単位」とは?
純アルコール基準飲酒量とは、様々な種類のお酒に含まれるアルコール量を統一的な基準で表すための指標です。ビールや日本酒、ウイスキーなど、それぞれアルコール度数が異なるお酒の量を、純アルコール量という共通の物差しで測ることで、飲酒量を把握できます。

日本では従来「単位」という基準が使われてきました。1単位は純アルコール約20gで、ビール500ml(5%)に相当します。しかし、この基準は国際的に見ても突出して高く、健康への影響も考慮して、近年は「1ドリンク=純アルコール10g」という新しい基準が採用されています。酒類ごとの純アルコール換算表は以下の通りです。
ビール
量 | 純アルコール換算(g) | ドリンク数 | ビール換算(ml) |
---|---|---|---|
コップ1杯 | 7 | 0.7 | 180 |
レギュラー缶(350ml) | 14 | 1.4 | 350 |
ロング缶 | 20 | 2.0 | 500 |
中ジョッキ | 13 | 1.3 | 320 |
中瓶(500ml) | 20 | 2.0 | 500 |
大瓶(633ml) | 25 | 2.5 | 630 |
日本酒(15%)
量 | 純アルコール換算(g) | ドリンク数 | ビール換算(ml) |
---|---|---|---|
1合(180ml) | 22 | 2.2 | 540 |
おちょこ(30ml) | 4 | 0.4 | 90 |
焼酎(20%)
量 | 純アルコール換算(g) | ドリンク数 | ビール換算(ml) |
---|---|---|---|
1合 | 29 | 2.9 | 720 |
量 | 純アルコール換算(g) | ドリンク数 | ビール換算(ml) |
---|---|---|---|
1合 | 36 | 3.6 | 900 |
チューハイ(7%)
量 | 純アルコール換算(g) | ドリンク数 | ビール換算(ml) |
---|---|---|---|
レギュラー缶 | 20 | 2.0 | 490 |
ロング缶 | 28 | 2.8 | 700 |
中ジョッキ | 18 | 1.8 | 450 |
チューハイ(9%)
量 | 純アルコール換算(g) | ドリンク数 | ビール換算(ml) |
---|---|---|---|
レギュラー缶 | 25 | 2.5 | 630 |
ロング缶 | 36 | 3.6 | 900 |
中ジョッキ | 23 | 2.3 | 580 |
ワイン(12%)
量 | 純アルコール換算(g) | ドリンク数 | ビール換算(ml) |
---|---|---|---|
ワイングラス(120ml) | 12 | 1.2 | 290 |
ハーフボトル(375ml) | 36 | 3.6 | 900 |
フルボトル(750ml) | 72 | 7.2 | 1,800 |
ウィスキー(40%)
量 | 純アルコール換算(g) | ドリンク数 | ビール換算(ml) |
---|---|---|---|
シングル水割り(原酒で30ml) | 10 | 1.0 | 240 |
ダブル水割り(原酒で60ml) | 19 | 1.9 | 480 |
ボトル1本(720ml) | 230 | 23.0 | 5,760 |
梅酒(13%)
量 | 純アルコール換算(g) | ドリンク数 | ビール換算(ml) |
---|---|---|---|
1合(180ml) | 19 | 1.9 | 470 |
おちょこ(30ml) | 3 | 0.3 | 80 |
泡盛(30%)
量 | 純アルコール換算(g) | ドリンク数 | ビール換算(ml) |
---|---|---|---|
1合(180ml) | 43 | 4.3 | 1,080 |
水割り(水2:泡盛1)コップ1杯 | 14 | 1.4 | 360 |
【早見表】お酒の酒類別・分解にかかる時間
アルコールの分解速度は、平均的な目安として1時間あたり4グラムです。例えば、アルコール1単位(20g)を摂取した場合、完全に分解されるまでに5時間かかる計算となります。ただし、性別や年齢、体重、体質に加えて、疲労や体調によっても変動します。
飲酒量と分解にかかる時間の目安は以下の通りです。
飲酒量 | アルコールの重さ(g) | アルコールが体内から消える推奨時間 |
---|---|---|
ビール(5%) :小グラス1杯100ml ワイン(12%) :ワイングラス1/2杯程度(40ml) |
4g | 1時間 |
ビール(5%) :350ml | 14g | 3.5時間 |
ビール(5%) :500ml チューハイ(7%) :350ml 日本酒(15%) :160ml(0.8合) ワイン(12%) :ワイングラス2杯(200ml) ウイスキー(40%):ダブル1杯(60ml) |
20g | 5時間 |
ビール(5%) :1ℓ | 40g | 10時間 |
ビール(5%) :2ℓ ワイン(12%) :1ボトル750ml強 |
80g | 20時間 |
ビール(5%) :5ℓ 日本酒(15%) :1升 |
200g | 50時間 |
より正確な分解時間を把握したい場合は、厚生労働省の「アルコールウォッチ」などの飲酒シミュレーションツールが便利です。体重や飲酒量を入力することで、アルコール血中濃度と分解時間の目安を計算できます。
ただし、計算結果はあくまで参考値であり、実際の体内アルコール濃度は体調や疲労度によって変動することにご注意ください。

【Excel】法令で定められた8項目をすべて満たしたアルコールチェック記録簿テンプレート
アルコール分解を早める方法はある?よくある疑問
アルコールの分解を早める方法について、よく耳にする「睡眠を取る」「汗をかく」という方法は、実は効果がないどころか危険な場合もあります。これらの方法についての誤解を解消し、正しい知識を身につけましょう。
寝たらアルコールは抜けるの?
仮眠を取ればアルコールが抜けると考えがちですが、実は正しくありません。睡眠中は内臓の働きも低下するため、むしろ通常よりも分解に時間がかかる場合もあります。
特に注意が必要なのは、日頃からお酒を飲む機会が多い人です。アルコールが体内に残っている状態に慣れてしまい、実際には分解されていないのに「もう大丈夫」と誤って判断してしまう危険性があります。このような慢性的な飲酒は、判断力の低下を自覚できにくくなるため、より深刻な事故につながりかねません。
汗をかくとアルコールは抜けやすくなる?
お風呂やサウナで汗を流せばアルコールも一緒に排出されると考える人は多いですが、これも誤りです。アルコールの分解は主に肝臓で行われ、汗での排出はごくわずか。むしろ発汗による脱水で血中アルコール濃度が上昇し、より酔いが回りやすくなってしまう場合があります。
さらに、飲酒後の入浴には、血圧の急激な変動による不整脈や、めまいによる転倒、最悪の場合は溺水事故にもつながる可能性があります。アルコールが残っている状態での入浴は避け、十分な時間を確保しましょう。
酒気帯び運転に対する罰則・行政処分
道路交通法では、血中アルコール濃度0.03%以上(呼気中アルコール量0.15mg/l以上)で酒気帯び運転として厳しく取り締まられます。違反者には、懲役刑や罰金といった刑事罰に加え、運転免許の停止や取り消しなどの行政処分が科せられます。
詳細な諸分野罰則については、以下の記事をご覧ください。

酒気帯び運転の基準値・処分・罰則を詳しく解説!酒酔い運転との違いとは?【弁護士監修】
飲酒運転は交通事故に結びつく危険性を高めるため、絶対にしてはいけない行為です。飲酒運転をした場合、法律による厳しい処分や罰則を受ける可能性があります。本記事では、酒気帯び運転の基準値や処分・罰則のほか、酒酔い運転との違いについて解説します。
飲酒運転防止策としてアルコールチェックが義務化に
2022年4月の道路交通法施行規則の改正により、事業所での飲酒運転防止対策が強化されました。白ナンバー車のみを使用する企業であっても、自動車を一定台数以上使用する事業所では、安全運転管理者の業務として運転前後のアルコールチェックの実施が義務付けられています。特に2023年12月からは、目視確認に加えてアルコール検知器の使用も必須となりました。
対象となるのは、乗車定員11人以上の自動車を1台以上、もしくはその他の自動車を5台以上使用する事業所です。この台数の計算には白ナンバーの社用車やリース車両も含まれ、検知結果の記録と1年間の保存も必要となります。
アルコールチェックの具体的な実施方法や記録の保管方法などについては、以下の記事にてご確認ください。

アルコールチェック義務化の対応方法と実施のポイント【弁護士監修】
道路交通法施行規則が改正され、現在は緑ナンバーだけでなく、一定台数以上の白ナンバーの社用車を持つ事業者にも安全運転管理者の選任とアルコールチェックの実施と記録の保存が義務付けられています。この記事では、アルコールチェックが義務となる事業者と対応方法、実施のポイントについて紹介しています。
アルコールチェック記録簿の基本やテンプレートについては、以下の記事にてご確認ください。

アルコールチェック記録簿の基本とテンプレート紹介
アルコールチェック記録簿は、法定の項目を記載の上、1年間の保存が義務付けられています。この記事では、アルコールチェック義務化の内容と背景、その重要性とアルコールチェック記録簿の作成方法、テンプレートを紹介しています。
アルコールチェッカーの使い方や選び方については、以下の記事にてご確認ください。

アルコールチェッカーの正しい使い方と企業に合った選び方を解説!
現在は緑ナンバーに加えて、一定台数以上の白ナンバーの社用車を持つ事業者にもアルコールチェッカーを用いたチェックの実施と保存が義務付けられています。この記事では、アルコールチェッカーの正しい使い方と選び方、メンテナンスについて紹介しています。
MIMAMO DRIVEでアルコールチェック記録業務を効率化!
ここまで、アルコールが体に与える影響や飲酒運転防止のための法規制について詳しく見てきました。アルコールチェックの義務化に伴い、記録の作成・保管が必要になりましたが、これらの業務を効率的に管理できるシステム「MIMAMO DRIVE」をご紹介します。
アルコール検査結果の記録や日報作成など、多くの事業所が抱える管理業務の課題を、このシステム1つで解決できます。その具体的なメリットと活用法を見ていきましょう。
MIMAMO DRIVEとは
MIMAMO DRIVEとは東京海上スマートモビリティが提供する、車両管理・リアルタイム動態管理サービスです。シガーソケット型端末を車両に搭載するだけで、管理者は車両を一元管理できます。
MIMAMO DRIVEでは、日報の自動化に加えてアルコール検知器の測定結果の写真や数値も、日報と一緒に一元管理する機能を搭載しています。そのほか、リアルタイムでの走行状況をマップで確認できたり、走行距離を自動で記録できたりする便利な機能が多数あります。
「月報・日報を書く時間がない」
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「事故のリスクを減らす効果的な方法が知りたい」
そんなお困りごとを、MIMAMO DRIVEなら解決できます。
ほかにも急ブレーキや急カーブなどの発生地点も確認できる機能があり、運転者に安全運転指導ができるので事故防止にもつながります。
東京海上グループは、お客様や地域社会の“いざ”をお支えするというパーパスを掲げ、100年以上にわたり、自動車保険をはじめとする様々な保険商品を提供してきました。
MIMAMO DRIVEは東京海上グループが長年培ってきた安全に関するノウハウに基づき運転者の走行を数値化し、アドバイス。運転評価やランキング、運転性向上など、安全指導に活用できる機能を搭載しています。
アルコールチェックの記録にMIMAMO DRIVEを導入するメリット
MIMAMO DRIVEは車両管理に関する重要な情報を一元管理できます。
- アルコールチェックの測定結果と日報を一元化
- ペーパーレス化により管理作業時間を短縮
- リアルタイムで位置情報を可視化し、管理業務を効率化
- 運転者の安全運転意識と運転マナーの向上
- 全車両の車検や保険の更新漏れを防止
上記のメリットのほかに、MIMAMO DRIVEは、運転者がスマホから入力可能なところも運転者が漏れなく記録できるポイントです。例えば、スマホからなら直行直帰や出張などで営業所に立ち寄れない場合でも、アルコール検知器による測定結果をその場で日報にあげることができます。とくに遠隔の場合は、紙媒体だと車両に持ち込み忘れたり、紛失したりする恐れがあります。MIMAMO DRIVEなら、遠隔でも運転者が記入したかどうかを確認することができ、記録簿の紛失の心配もいりません。
導入事例
乳製品の卸売販売と小売店舗を営む永島牛乳店様の事例をご紹介します。永島牛乳店様では、取引先への商品の納品用に5台の社用車を保有しています。運転者の自損事故をきっかけにMIMAMO DRIVEを導入しました。
リアルタイムで車両の位置情報を把握できるため、運転者が出発後に追加注文が入った際にも、代わりに動きやすい運転者を見つけて効率よく指示出しができるようになりました。また、納品時間を気にされる取引先へのご案内もスムーズにできており、全体を通じて、管理者の負担削減につながっています。
ガソリンスタンドの運営と燃料の卸販売、ビルメンテナンス業を営む手塚商事様の事例をご紹介します。運転者の日報の手書きによる記載ミスが発生していました。MIMAMO DRIVEの導入により、日報の作成が自動化され毎日の作業時間を30~40分短縮できています。
また、車両管理も車検満了日などは管理表を作成し運用していましたが、台数が多く負担を感じていました。導入後はMIMAMO DRIVEで一元管理し、業務の効率化を実現しています。
- MIMAMO DRIVE 資料紹介
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MIMAMO DRIVEは社有車に関する “経営者” “車両管理者” “運転者”皆様のお困りごとを解決する、 車両管理・リアルタイム動態管理サービスです。サービスの概要や主な機能、活用事例を簡単にご紹介しています。サービスの導入をご検討されている皆様にぜひご覧いただきたい資料になります。
まとめ
アルコールが体に与える影響は、想像以上に深刻です。特に運転への影響は、法定基準(血中アルコール濃度0.03%)よりも低い濃度から現れ始め、判断力や反応速度の低下を引き起こします。
アルコールの分解には個人差があり、睡眠や発汗で早まることもありません。安全な運転のためには、純アルコール量を正しく計算し、体から完全に抜けるまでの時間(1時間あたり4g)を余裕を持って確保することが重要です。
また、白ナンバー車のみを用いる企業であっても、所定の要件を満たす事業所では、2022年4月からアルコールチェックが義務化されました。適切な管理体制の整備と、記録の保管が、飲酒運転防止の第一歩となります。