2022年4月、道路交通法施行規則の改正により、一定の台数以上の白ナンバー車両を使用する事業者もアルコールチェック義務化の対象になりました。
しかし、「アルコールチェック義務化対象になる条件がよくわからない」「アルコールチェックの詳細な実施内容を知りたい」と思っている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、アルコールチェックが必要となる対象事業者や条件、具体的な実施方法までを詳しく解説します。企業の安全運転管理者や事業主の方は、ぜひ参考にしてください。
アルコールチェックの義務化の概要と背景
2022年4月、道路交通法施行規則の改正により、アルコールチェックの義務化対象が大幅に拡大されました。従来、タクシーやトラックなどの事業用車両である「緑ナンバー」のみに課せられていた義務が、一定条件を満たす事業所の「白ナンバー(注1)」の車両にも適用されることとなったのです。
法改正に至った背景には、2021年6月に千葉県八街市で発生した痛ましい事故があります。下校途中の小学生の列に、飲酒運転の白ナンバートラックが衝突し、児童5名の死傷者を出しました。事故後の検査で運転手の呼気からは基準値を超えるアルコールが検出されましたが、当時、白ナンバー車両はアルコールチェックが義務付けられていませんでした。
同年8月、内閣府は「通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策」を発表。飲酒運転を防止するためには、白ナンバーにおいても対策の強化が必要と判断され、アルコールチェックを義務化するよう法改正が行われました。
注1:緑ナンバーの車両以外の、自家用車や社用車として利用される自動車に取り付けられる、白地に緑の文字のナンバープレートのこと。なお、黄色ナンバーの軽自動車もここでいう白ナンバーに含まれます。白ナンバー・黄色ナンバーと緑ナンバー・黒ナンバーの違い
ナンバープレートは、「白ナンバー」「黄色ナンバー」「緑ナンバー」「黒ナンバー」の4種類があります。色分けの基準となるのは、車両の使用目的です。具体的には「自家用」か「事業用」かで異なります。
白い板に緑色の文字の「白ナンバー」は「自家用車両」を表すナンバープレートです。一般的な乗用車はもちろん、企業が営業活動で取引先へ行く場合や自社商品を運ぶ場合に使用する車両がこの区分に含まれます。同じく自家用の軽自動車には、黄色い板に黒文字の「黄色ナンバー」が使用されます。
一方、緑色の板に白い文字が書かれた「緑ナンバー」は、「事業用車両」を表すナンバープレートです。タクシー、バス、トラックなど、運賃を受け取って人や荷物を運ぶ自動車に割り当てられます。事業用の軽自動車には、黒い板に黄色文字の「黒ナンバー」が採用されています。
このようにナンバープレートの色は、車両の使用目的によって区分けされているものです。その車両が自家用なのか事業用なのか、外観から判別できるように工夫されています。
白・黄色ナンバーでアルコールチェックが義務づけられる状況とは?
白・黄色ナンバーの車両でアルコールチェックが義務付けられるのは、基本的に「車両を業務に使用する場合」です。
ここからは、「社用車を業務中に使用する場合」「自家用車を業務に用いた場合」「通勤やプライベートの場合」の3つの状況で、アルコールチェック義務が発生するか否かを解説します。
社用車を業務中に使用する場合
社用車を業務で使用する場合は、安全運転管理者の選任を要する場合と要しない場合で、アルコールチェック義務の有無が異なります。
安全運転管理者の選任を要する事業所
白・黄色ナンバーでアルコールチェックが義務付けられるのは、安全運転管理者の選任が必要な事業所です。具体的には以下の通りですが、「自動車を5台以上使用する事業所」もしくは「乗車定員が11人以上の自動車を1台以上使用している事業所」は注意が必要です。
引用:道路交通法施行規則第九条の八(安全運転管理者等の選任を必要とする自動車の台数)
第九条の八 法第七十四条の三第一項の内閣府令で定める台数は、乗車定員が十一人以上の自動車にあつては一台、その他の自動車にあつては五台とする。
2 法第七十四条の三第四項の内閣府令で定める台数は、二十台とする。
3 前二項及び第九条の十一の台数を計算する場合においては、大型自動二輪車一台又は普通自動二輪車一台は、それぞれ〇・五台として計算するものとする。
すでに安全運転管理者を選任している場合は、業務に車両を使用する際、必ずアルコールチェックを行いましょう。
安全運転管理者の選任を要しない事業所
白・黄色ナンバーでアルコールチェックが義務付けられているのは、安全運転管理者の選任義務がある事業所です。ただし、安全運転管理者の選任義務がない場合でも企業の自主的な安全管理の一環として、アルコールチェックの実施をおすすめします。
自家用車を業務に用いた場合
従業員が自家用車(マイカー)を業務に使用する場合も、安全運転管理者の選任義務がある事業所において、当該従業員がその自家用車を自らの判断・管理の下で用いるのではなく、使用者が実質的に管理していわば社用車のような運用となっている場合には、アルコールチェックの対象です。社有車、レンタカー、マイカーの区別なく、安全運転管理者の選任義務がある事業所において、業務目的で運転される場合はすべて「業務用車両」として扱われる可能性があります。よって、必ずアルコールチェックを実施しましょう。
なお、マイカーであっても、それが業務使用される場合は、使用者責任が発生する可能性があります。なぜなら、業務利用される場合は、マイカーの運行利益は企業に帰属していると評価でき、会社保有車と変わらないからです。従業員が業務中に起こした事故は、たとえマイカーによるものであっても企業の管理責任が問われる可能性があるため、確実なアルコールチェックの実施と記録の保管が求められます。
なお、直行直帰で自家用車を業務に用いる場合の取り扱いについては、以下で詳しく解説しているのでご覧ください。

直行直帰時のアルコールチェックは必要?義務化のポイントとスムーズな運用方法を解説
2022年4月から施行された改正道路交通法により、一定台数以上の社用車を使用する事業者に対するアルコールチェックが義務化されました。しかし、直行直帰の場合は対面での確認が難しく、どのように実施すれば良いのか悩む安全運転管理者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、直行直帰時のアルコールチェックの必要性や、スムーズな運用方法、怠った場合の罰則などについて解説します。
通勤やプライベートの場合
「勤務時間内に業務として車を運転する場合」以外は、原則としてアルコールチェックの法的義務は発生しません。
ただし、従業員の通勤時における飲酒運転事故は、企業の社会的信頼が損なわれる可能性があります。そのため、法的義務がなくても、アルコールチェックを自主的に実施する企業もあります。特にマイカー通勤者が多い事業所では、飲酒運転防止の観点から、任意でのアルコールチェック体制を整備することが望ましいです。
アルコールチェック義務とは?
白ナンバー車両に関するアルコールチェック義務は、道路交通法改正により2022年4月から導入されました。白ナンバー車両を一定台数以上使用する事業所に対して、運転前後のアルコールチェックを義務付けています。
なお、緑ナンバー車両は2011年からすでにアルコールチェックが義務化されており、今回の改正はその対象を拡大したものといえます。
アルコール検知器を用いたチェックが義務化される
アルコールチェックの義務化は、段階的に進められました。2022年4月の第一段階では、安全運転管理者に対して、運転前後における目視での酒気帯びの確認と記録の保存が義務付けられました。
続く2023年12月からの第二段階では、アルコール検知器を用いたチェックが必須となっています。
引用:道路交通法施行規則第九条の十(安全運転管理者の業務)
第九条の十 六 運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であつて、国家公安委員会が定めるものをいう。次号において同じ。)を用いて確認を行うこと。
七 前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を一年間保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること。
アルコール検知器は、呼気中のアルコールを検知し、その有無や濃度を警告音、警告灯、数値などで示す機能を備えた機器を使用する必要があります。また、検知器は定期的に点検を行い、常時正確な測定が可能な状態に保持しなければなりません。検知器は常に正確な測定が可能な状態に保つことが求められ、これらの保守管理も義務に含まれます。

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アルコールチェック実施のポイント
アルコールチェックの対象となるのは、業務目的で運転を行う従業員です。営業活動で社用車を使用する場合や、業務目的で自家用車を使用する場合などが該当します。チェックは、少なくとも運転前と運転後の1日2回実施が必要です。ただし、必ずしも運転の直前・直後である必要はなく、運転を含む業務の開始前や出勤時、終業後や退勤時での実施も認められています。
原則として、アルコールチェックは安全運転管理者が対面で実施してください。アルコール検知器による測定に加えて、運転者の顔色や呼気の臭い、応答の声の調子なども確認し、記録します。安全運転管理者が不在の場合は、副安全運転管理者や業務を補助する者が代理で確認を行えますが、この場合でも最終的な責任は安全運転管理者にあります。
なお、直行直帰や出張などで対面での実施が困難な場合は、ビデオ通話など、遠隔での状態確認も可能です。ただし、メールやチャットなど直接対話を伴わない手段は認められていないため、注意が必要です。測定結果は、検知器の数値表示を写真で送付するなどの方法で報告を受けるようにしましょう。
アルコールチェックを怠った場合の罰則はある?
アルコールチェックを怠り飲酒運転が発生した場合、運転者本人と、事業所の双方に厳しい罰則が科せられます。
例えば、運転者が酒気帯び運転で検挙された場合、運転者本人に加えて、車両を提供した事業所の責任者や管理者にも3年以下の懲役、または50万円以下の罰金という処罰が科せられる可能性があります。さらに深刻な酒酔い運転の場合、5年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。
特に重要なのは、運転者が酒気を帯びていることを知りながら運転を指示した場合の扱いです。この場合、事業所の代表者や運行管理責任者は、運転者に車両を提供したことのほか、運転者の飲酒運転を唆し(教唆)、助け(幇助)、または運転者を通じもしくは運転者とともに飲酒運転を自らおこなった(間接正犯・共同正犯)ものとして、刑事責任を問われる可能性があります。
また、飲酒運転による重大事故が発生した場合、事業者には事業停止命令などの行政処分が下されることもあります。企業印象の悪化も避けられないため、飲酒運転を根絶すべく、アルコールチェックを怠らないことが重要です。

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まとめ
2022年4月、道路交通法施行規則の改正により、白ナンバー車両を使用する一部の事業者においても、アルコールチェックが義務化されました。具体的には安全運転管理者の選任が必要とされる「5台以上の自動車を使用する事業所」、または「定員11人以上の自動車を1台以上使用する事業所」が対象です。社用車だけではなく、業務で使用され会社が管理する従業員の自家用車も台数に数えます。また、従業員の自家用車を業務に使用する場合もアルコールチェックの対象となり得る点に注意してください。
2023年12月からは、アルコール検知器を用いた確認が義務付けられました。実施は運転前後の1日2回で、安全運転管理者が対面で行うことが原則です。運転者の顔色や呼気の臭い、応答の声の調子なども含めた総合的な確認が求められ、その結果は1年間の記録保存が求められます。
なお、通勤やプライベートでの運転はアルコールチェックの法的義務の対象外となりますが、企業の信頼維持のため、自主的なチェック体制の整備を検討することをおすすめします。飲酒運転が発生した場合、企業と運転者双方に厳しい罰則が課されるおそれがあるため、確実な管理体制の構築が重要です。