社用車は企業にとって重要な業務資産ですが、従業員が私的に利用したいという状況も発生しがちです。たとえば、休日の外出や引っ越しなどで社用車を使いたい場合、その利用がどのようなリスクを伴うのか、企業としてどのように対応すべきかを知っておく必要があります。
本記事では、社用車の私的利用に関する法的リスク、企業が取るべき対策、さらに私的利用の具体的なケースを詳しく解説します。企業が社用車を適切に管理し、安全な運用を維持するための方法についても触れていきます。
社用車とは
社用車とは、企業が従業員に業務用として提供する車両のことです。通常、営業活動や顧客訪問、外出が多い従業員に貸与されます。社用車の利点は、業務の効率化と移動の快適性の向上です。従業員が自家用車を使用する場合、業務上の管理が困難になることがありますが、社用車を提供することでその問題を解消できます。
一方で、社用車の導入には一定のコストが伴います。購入費用や維持費、保険料などが発生するため、予算管理が重要です。また、従業員の安全運転教育や車両管理システムの導入も必要となります。これにより、事故防止やメンテナンスの効率化を図ることができます。
社用車の使用にあたっては、通常、業務以外の利用は禁止されているか、限定的に許可されています。企業としては、社用車の使用目的や利用ルールを明確に定めておくことが重要です。
社用車を私的利用しても問題はない?
社用車の私的利用に関して、法律で明確に禁止されているわけではありませんが、企業内のルールによってその可否が決まります。
業務以外の目的で社用車を使用すると、企業に予想外のリスクやコストがかかる可能性があるため、多くの企業では私的利用を制限しています。たとえば、業務外で使用中に交通事故を起こした場合、その責任がどこにあるのかが問題になります。企業が車両の所有者である以上、管理責任が発生することがあり、これが法的リスクに繋がる可能性があります。
また、企業が所有する車両は業務目的で使用するために保険契約がされています。私的利用中に事故が発生した場合、保険適用外となるケースがあり、その修理費や補償額は全額企業が負担するリスクがあります。特に、休日利用や通勤時の使用では事故リスクが高まるため、事前に私的利用を明確に禁止するか、許可する場合でも適切な対策を講じる必要があります。
社用車を私的利用するケース
社用車の私的利用には、業務中や休日にさまざまなケースが考えられます。例えば、業務中の寄り道や、休日の外出に利用する場合です。これらの利用は一見問題がなさそうに見えますが、事故や故障が発生した際には企業に責任が及ぶリスクもあります。
本項では、具体的な私的利用のケースについて、どのような状況で問題が生じやすいかを解説します。
寄り道
業務中、営業先や取引先を回る途中で個人的な用事を済ませるために寄り道をするケースが考えられます。たとえば、銀行へ立ち寄ったり、帰宅途中にスーパーマーケットで買い物をしたりする場合です。このような私的利用は一見小さな問題のように見えるかもしれませんが、万が一、寄り道中に事故が発生した場合、企業としてどのように対応すべきかが課題となります。
例えば社員が取引先への訪問途中に個人的な寄り道を行い、その間に駐車場で接触事故を起こした場合、業務中の事故として企業が補償責任を負わざるを得なくなります。このように、寄り道が原因で生じるリスクを軽減するためには、事前に私的利用を禁止するか、明確な利用規定を整備することが重要です。
休日利用
社用車を休日に私的な目的で利用するケースもあります。たとえば、引っ越しやちょっとした外出利用など、通常の業務には関係のない利用がこれに該当します。このような場合、企業が管理ができず、事故が発生した場合に対応が難しくなることが考えられます。
私的利用中に事故や交通違反を起こした場合、企業は車両管理の不備を指摘され、罰則を受ける可能性があります。こうしたトラブルを防ぐためには、社用車の休日利用に関する事前許可制度や、利用後の車両点検を徹底することが有効です。
社用車の私的利用で想定されるリスク
社用車の私的利用には、企業にとって多くのリスクが潜んでいます。特に、交通事故や違反が発生した場合、法的責任、企業イメージの低下、さらに経費の増加や情報漏洩といった問題が発生する可能性があります。これらのリスクは、企業の管理体制が不十分な場合に大きくなり、対策が必要不可欠です。本項では、私的利用によって発生しうるリスクを解説します。

交通事故により企業が法的責任を問われる
社用車の私的利用中に交通事故が発生した場合、企業が法的責任を負う可能性があります。たとえば、私的利用中に従業員が他者にけがを負わせたり、器物を損壊したりした場合、その賠償責任は基本的に事故を起こした従業員にありますが、車両の所有者である企業も損害賠償責任を追及される可能性があります。
社用車の管理が適切でないと判断されると、企業が損害賠償を負うリスクが高まるため、私的利用に関する明確な規定を設け、従業員に周知することが重要です。
企業イメージを低下させる
私的利用によって交通事故や交通違反が発生し、それが社用車であることが公に知られると、企業イメージに悪影響を与えるリスクがあります。たとえば、社用車が速度違反や駐車違反で摘発された場合、企業の信用を損ねることになります。特に、ロゴや社名が印字された車両で違反が行われると、顧客や取引先の信頼を失いかねません。
現在はSNSの普及により、簡単に情報が拡散される恐れがあります。その結果、企業の評判が急速に悪化することも考えられます。このような事態を防ぐためにも、私的利用に関するガイドラインを明確にし、従業員が社用車を私的に使用する際の注意点を徹底することが求められます。
業務負担や経費が増える
私的利用によって社用車が頻繁に使用されると、企業にとっては燃料費やメンテナンスコストが増加する可能性があります。さらに、私的利用中に車両が故障した場合、その修理費用も企業が負担する可能性があり、これが経費負担の増加につながります。
また、私的利用が原因で頻繁に車両のメンテナンスや修理が必要になると、業務での車両利用に支障が生じることも考えられます。これにより、業務効率が低下し、結果的に経費が増加する可能性があるため、私的利用に関しては適切なルールを設定し、運用することが重要です。
盗難による情報漏洩
社用車の私的利用中に車両が盗難に遭うリスクもあります。特に、社用車内には企業の機密情報や顧客情報を含む書類や機器が保管されていることがあるため、これらの情報が流出する危険性があります。たとえば、私的な用事で社用車を使用中に車上荒らしに遭い、企業の重要書類が盗まれると、企業にとって大きなダメージを与えることになります。
盗難による情報漏洩が発生すると、企業の信用が失われ、取引先や顧客からの信頼も失いかねません。このため、私的利用時に機密情報を車内に保管しないよう指導することや、車両自体のセキュリティを強化することが重要です。
私的利用する場合に企業が行いたい対策
社用車の私的利用を許可する場合、企業はリスクを最小限に抑えるために適切な対策を講じる必要があります。明確な利用規定の整備や従業員への安全運転教育、そして車両管理システムの導入などが有効な手段です。これにより、事故や不正利用、経費の増加といったリスクを軽減し、企業全体の管理体制を強化できます。
本項では、企業が取るべき具体的な対策について詳しく解説します。

社用車に関するルールや規定の整備
社用車の私的利用に伴うリスクを回避するためには、まず社内で明確なルールや規定を整備することが重要です。例えば、どのような場合に私的利用が許可されるのか、使用の際に必要な申請手続き、費用負担の範囲などを詳細に定め、全従業員に周知することが求められます。
ここで重要になるのは車両管理規定です。車両管理規程は、従業員が業務中に使用する車両に関して定めるルールです。交通事故や車両の破損を防ぎ、企業のリスクを最小限に抑えるために、しっかりとした車両管理規程を設けることが重要です。
詳細はこちらの記事をご覧ください。

【完全版】企業を守る車両管理規程とは?作成のポイントや注意点、必須項目を解説
車両管理規程は、従業員が業務中に使う車両に関して定めるルールです。なぜ車両管理規程を定める必要があるのでしょうか。この記事では、車両管理規程の必要性や記載すべき必須項目、作成時の注意点をご紹介します。
ルールを明確にすることで、私的利用が発生しても予期せぬリスクやコストの増加を抑えることができます。
社員に対する安全運転教育
社用車の私的利用が許可される場合、従業員に対する安全運転教育が非常に重要です。特に、私的利用中に事故が発生すると企業に法的責任が発生する可能性があるため、定期的に安全運転講習を行い、従業員に交通法規の遵守や安全運転の重要性を再認識させることが必要です。これにより、事故発生率が低下し、企業としてのリスクも軽減されます。
車両管理システムの導入
車両管理システムを導入することで、社用車の利用状況をリアルタイムで把握できるようになります。例えば、GPSを搭載したシステムを使えば、車両の位置情報や走行ルート、燃費、メンテナンス状況を詳細に記録し、効率的に管理することが可能です。
特に、私的利用が許可されている企業では、システムを使って利用状況を監視することで、事前申請外の不正な利用や規定外の使用を防ぐことができます。また、事故が発生した場合にも迅速に対応できるため、リスク管理の観点からも非常に有効です。
社用車管理を効率化するMIMAMO DRIVE
企業の車両管理や安全運転等を支援するフリートマネジメントサービス「MIMAMO DRIVE」(ミマモドライブ)では、社用車に関するお困りごとを解決します。
MIMAMO DRIVEとは
MIMAMO DRIVEとは東京海上スマートモビリティが提供する、車両管理・リアルタイム動態管理サービスです。シガーソケット型端末を車両に搭載するだけで、管理者は車両を一元管理できます。
MIMAMO DRIVEでは、日報の自動化に加えてアルコール検知器の測定結果の写真や数値も、日報と一緒に一元管理する機能を搭載しています。そのほか、リアルタイムでの走行状況をマップで確認できたり、走行距離を自動で記録できたりする便利な機能が多数あります。
「月報・日報を書く時間がない」
「紙媒体で管理していた煩雑な車両の使用状況を効率的に管理したい」
「事故のリスクを減らす効果的な方法が知りたい」
そんなお困りごとを、MIMAMO DRIVEなら解決できます。
ほかにも急ブレーキや急カーブなどの発生地点も確認できる機能があり、運転者に安全運転指導ができるので事故防止にもつながります。
東京海上グループは、お客様や地域社会の“いざ”をお支えするというパーパスを掲げ、100 年以上に わたり自動車保険をはじめとする様々な保険商品を提供してきました。
MIMAMO DRIVEは東京海上グループが長年培ってきた安全に関するノウハウに基づき運転者の走行を数値化し、アドバイス。運転評価やランキング、運転性向上など、安全指導に活用できる機能を搭載しています。
MIMAMO DRIVEを導入するメリット
MIMAMO DRIVEは車両管理に関する重要な情報を一元管理できます。
- アルコールチェックの測定結果と日報を一元化
- ペーパーレス化により管理作業時間を短縮
- リアルタイムで位置情報を可視化し、管理業務を効率化
- 運転者の安全運転意識と運転マナーの向上
- 全車両の車検や保険の更新漏れを防止
上記のメリットのほかに、MIMAMO DRIVEは、運転者がスマホからも入力が可能です。例えば、スマホからなら直行直帰や出張などで営業所に立ち寄れない場合でも、アルコール検知器による測定結果をその場で日報にあげることができます。とくに遠隔の場合は、紙媒体だと車両に持ち込み忘れたり、紛失したりする恐れがあります。MIMAMO DRIVEなら、遠隔でも運転者が記入したかどうかを確認することができ、記録簿の紛失の心配もいりません。
導入事例
乳製品の卸売販売と小売店舗を営む永島牛乳店様の事例をご紹介します。永島牛乳店様では、取引先への商品の納品用に5台の社用車を所有しています。運転者の自損事故をきっかけにMIMAMO DRIVEを導入しました。
リアルタイムで車両の位置情報を把握できるため、運転者が出発後に追加注文が入った際にも、代わりに動きやすい運転者を見つけて効率よく指示出しができるようになりました。また、納品時間を気にされる取引先へのご案内もスムーズにできており、全体を通じて、管理者の負担削減につながっています。
ガソリンスタンドの運営と燃料の卸販売、ビルメンテナンス業を営む手塚商事様の事例をご紹介します。運転者の日報の手書きによる記載ミスが発生していました。MIMAMO DRIVEの導入により、日報の作成が自動化され毎日の作業時間を30~40分短縮できています。
また、車両管理も車検満了日などは管理表を作成し運用していましたが、台数が多く負担を感じていました。導入後はMIMAMO DRIVEで一元管理し、業務の効率化を実現しています。
- MIMAMO DRIVE 資料紹介
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MIMAMO DRIVEは社有車に関する “経営者” “車両管理者” “運転者”皆様のお困りごとを解決する、 車両管理・リアルタイム動態管理サービスです。サービスの概要や主な機能、活用事例を簡単にご紹介しています。サービスの導入をご検討されている皆様にぜひご覧いただきたい資料になります。
まとめ
社用車の私的利用は、従業員にとって便利な反面、企業にとっては法的責任や経費の増加、事故リスクなど多くの課題を伴います。企業は、社用車の利用に関する明確なルールを整備し、従業員への周知徹底を図ることが重要です。さらに、車両管理システムや安全運転教育を導入することで、リスクを最小限に抑えつつ効率的な運用が可能となります。
適切な管理体制を構築することで、企業全体の業務効率化と従業員の安全を確保しながら、社用車の利用を最大限に活用できるでしょう。