運行管理者は、貨物や旅客の運送業で活用できる国家資格の1つ。 その理由は、貨物や旅客の運送業を営む企業では、法律により運行管理者の資格を持つ人材を配置することを義務づけられているからです。
運行管理者になれば、勤めている会社での待遇の向上につながったり、就職や転職に有利になったりと多くのメリットがあります。
しかし、貨物や旅客の運送業を営む企業に携わったことがない方は、運行管理者という資格があることすら知らないこともあるでしょう。
本記事では、運行管理者の具体的な仕事内容や資格取得の方法、向いている人の特徴などをご紹介します。
運行管理者とは
運行管理者とは、お客様や貨物を安全に輸送するために設けられた国家資格です。
運行管理者は、道路運送法および貨物自動車運送事業法に基づき、安全に車両を運行する責任者として、車両管理をはじめとする様々な業務を担当しています。
トラックやバス、タクシーなどの事業用自動車の運行管理を一定数以上行っている会社では、営業所ごとに必要な人数の運行管理者を選任するよう義務づけられています。
つまり運行管理者を一言で表すなら、事業用自動車の安全な運行を管理するスペシャリスト。 事故をはじめとするトラブルを減らすためのあらゆる業務を担当する人のことを運行管理者というのです。
運行管理制度とは
運行管理者制度では、トラックやバス、タクシーなどの事業用自動車を安全に運行するために、営業所ごとに車両数に応じた人数の運行管理者を配置することが義務づけられています。 また1つの営業所に複数の運行管理者がいる場合は、その中から統括運行管理者を選任する必要があります。
人が行うことである限り、どれだけ細心の注意を払っても完璧にミスを無くすことは困難です。 だからこそ安全に事業用自動車を運行するために、運送業界では運行管理者の配置が義務づけられているのです。
引用元:道路運送法第二十三条(運行管理者)
第二十三条 一般旅客自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため、国土交通省令で定める営業所ごとに、運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、運行管理者を選任しなければならない。
引用元:貨物自動車運送業法第十八条(運行管理者)
第十八条 一般貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため、国土交通省令で定めるところにより、運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、運行管理者を選任しなければならない。
運行管理者の役割
運送業において最も重要なのは、交通ルールを守って安全に物を輸送したり、お客様を運んだりすることです。
運行管理者は、安全に事業用自動車を運行するための責任者として、運転者への指導・指示や監督の役割を担っています。
より詳しくお話しするために運行管理者が活躍できる業界についても触れておきましょう。
運行管理者が重宝される主な業界は、以下です。
- 貨物運送業界
- タクシーやバスなど旅客業界
どの業界も公共の公道を使うため、万が一にも事故を起こせば甚大な被害を出すことになります。
事故をはじめとするトラブルを防ぐには、運転者が身体的にも精神的にも健やかな状態であること、そして運転する上での高い安全意識を持っていることが重要です。
運行管理者は、安全な運行を行うために運転者の心身の健康管理や運転者に法令等を遵守するよう指導する役割を担っています。
運行管理者の主な仕事内容
運行管理者の主な業務は、以下の5つです。 具体的にどのような仕事内容なのか順番に見ていきましょう。

労務管理
運行管理者の業務の1つ目は労務管理です。
例えば、運転者の乗務前後には運行管理者が自ら対面で点呼を行います。 また、記録簿をもとに、運転者の労働時間や残業時間を把握します。 労務管理を徹底することで運転者の過労運転を防ぐことは運行管理者の重要な仕事の1つです。過労運転は大きな事故やトラブルを引き起こす可能性があるため、見逃すことはできません。
さらに運転者が睡眠や休息のために利用する施設を管理することも業務の一部です。
車両管理
運送業を営む会社では、トラックやタクシー、バスなどの車両を保有しています。 車両管理は、使用している自動車の台数を把握し、自動車に故障がないかをチェックするという意味です。
どれだけ丁寧に乗っていても、どうしても故障などの問題はつきものです。 大切なのは、故障させないことではなく、使用する前に故障などのトラブルにいち早く気づき、納期や運行のスケジュールに悪影響が出ないように調整を行うことです。
仮に故障に気づかず運転してしまえば、大きな事故につながる可能性があります。 車両点検の作業自体を運行管理者がすることは、ほとんどありません。大体は別の担当者が行い、点検の結果を運行管理者に報告します。
運行ルート管理
貨物自動車運送業を営む企業にとって効率的な配送や納期を遵守するためには適切なルートを選択することはとても重要です。
配送を効率的に行うことは、運転者の仕事時間の短縮にもつながり、結果として運転者の心身にかかるストレスを軽減することもできるでしょう。
ただ単純に効率的に運行できるルートを選ぶだけでは、十分な仕事とは言えません。
時には事故や悪天候の影響で、予定していたルートを使用しては危険になることもあります。そんな時は、トラブルを未然に防止するためにルートの変更を運転者に指示する場合もあります。
また予定していたルートが道路工事をしている場合もあります。
そんな時には工事をしている場所を避けた上で、最適なルートを見つけて運転者に指示することもあります。
効率的に物を届けると同時に、最新の道路情報や天候などさまざまな面も考慮して配送ルートを管理します。
安全管理
運行管理者は「運転者が疲れていないか」「健康な状態で業務に就こうとしているか」を把握しておかなくてはなりません。
運転者が体調不良や睡眠不足の状態だと、事業用自動車を安全に運行できない可能性が大いにあります。事故を起こさないため、そして運転者の安全のために前もって別の運転者を配置します。
さらに事故を防止するために講習などを行い、運転者のスキルや安全意識を高めることも重要な仕事の1つです。
その他にも、例えば貨物では運搬中の荷崩れによる落下防止のためロープやシート掛けのやり方など積載方法の指導や監督も行います。
運転者への指導・監督
業務している中で油断が生まれたり、正しい手順を省く人が出てくることもあります。
ちょっとした怠慢が大きな事故につながることも少なくありません。
運行の安全を確保するため、運転者に対して細やかに指導を行い、安全関係法令等遵守の徹底を図ることも運行管理者の大切な役目です。
運行管理者になるためには「運行管理者資格者証」を取得する必要がある
ここまで運行管理者とは、どんな資格なのかについてお話してきました。 この章では、資格取得の方法について紹介いたします。
運行管理者(貨物・旅客)になるには、運行管理者資格者証の交付を受ける必要があります。
交付を受けるためには「運行管理者試験に合格する」「実務経験などの要件を満たす」の2つの方法があります。
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
試験による取得方法について
運行管理者になるには、基本的に国家試験に合格しなければなりません。
ただ、誰でも試験を受けられるわけではありません。
以下2つの要件のうち、いずれかを満たしている人が受験できます。
①運行管理に関して1年以上の実務経験
1つ目は、以下のいずれかの事業用自動車の運行管理の実務経験が1年以上あること。
〇自動車運送事業(貨物軽自動車運送事業を除く)の用に供する事業用自動車
〇特定第二種貨物利用運送事業者の事業用自動車(緑ナンバーの車)
②基礎講習修了、または修了予定
2つ目は、国土交通大臣の認定を受けた基礎講習を、修了または修了予定であること。
実務経験による方法について
次に、実務経験などの要件を満たしていれば、運輸支局に交付申請することで資格者証を取得できます。この場合、国家試験を受ける必要はありません。
- 運行管理の実務経験が5年以上あること
- 実務経験の期間中に5回以上国土交通大臣の認定を受けた講習を受けている
2番目の条件については、5回のうち、少なくとも1回は基礎講習を受講していることが必要です。
なお、受講回数は実務経験をスタートしてから数えるため、基礎講習を受ける前に受講した一般講習はカウントされません。

【2024年版】運行管理者資格とは?取得方法や要件、試験概要や合格率まで徹底解説!
運送業で配置が義務付けられている運行管理者の資格を取得すれば、待遇改善などのメリットが得られる可能性があります。運行管理者資格を取得するためにはどのような方法があるのでしょうか。本記事では、運行管理者とはどのような資格なのか、資格の取得方法、試験の概要や合格率を詳しく解説します。
運行管理者になるメリット
運行管理者の仕事は多岐にわたり、正直「こんなことまでするの?」と思った方もいるかもしれません。
確かに運転管理者は、安全に運行を行う要のような存在。業務量も背負う責任も軽いとは言い難い部分もあります。
けれど、それに見合うだけのメリットが運転管理者になれば得られます。
収入アップが期待できる
運転管理者になれば収入アップにつながる可能性があります。
事業用自動車を保有している会社では、必ず運行管理者を設置しなければなりません。
そのため、資格を持っていれば手当が支給されたりする会社もあります。すでに運送業を営む会社に勤めている方なら、昇給・昇格が見込めるかもしれません。
内勤でも働ける
「運送業界に興味はあっても、運転者として勤めるのは不安だ」という人もいるでしょう。
運行管理者の資格を持っていれば、内勤として勤めることも可能です。
そうなれば運転者として働くのはハードルが高いと感じている人や年齢が上がり運転者を続けにくいと感じている人も仕事を続けやすいでしょう。
運行管理者に向いている人の特徴
安定して働ける運行管理者は、これから就職する人や転職を考えている人にとって魅力的な職業です。
ただ、業務内容が多岐に渡るため、どういう適性があればより活躍できるのか気になるという人もいるでしょう。
本章では、運行管理者に向いている人の特徴を2点ご紹介します。

責任感の強い人
運行管理者は、事業用自動車が安全に運行するための要です。それだけでなく、運転者や公共の道路の安全につながる業務のため責任は大きいといえます。
例えば、乗務割を作成する場合、連続運転時間や休息時間などの細かい基準を守る必要があります。
大きなトラブルを引き起こす可能性があるため、自己判断になったり、どんぶり勘定になったりすることは許されません。
そのため運行管理者は、自分の業務を誠実かつ強い責任感を持って行う必要があります。
コミュニケーション能力が優れている人
運転者の指導や育成も運行管理者の業務の1つ。
年齢も性格も異なる大勢の運転者を牽引しながら、効率的かつ安全に業務を進めるのも運行管理者の役目。とはいえ、うまくコミュニケーションがとれないと、社内が険悪な雰囲気になってしまうかもしれません。
大勢の人と円滑に仕事をするためには、高いコミュニケーション能力が必須です。
安全意識を高めるための指導をしたり、荷物の積載方法を監督したりする際には、相手のことを尊重しながらも伝えるべきことは言わなければなりません。
時には、相手にとって耳が痛くなるようなことを言わなければならない場面もあるでしょう。
そのためにも日頃から、しっかりと人間関係を構築しておく必要があります。
コミュニケーション能力は運行管理者となる上で重要な要素の1つです。
運行管理者業務を効率化するなら「MIMAMO DRIVE」
これまで運行管理者の業務についてもご紹介しましたが、やるべきことが多すぎて驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
運行管理者の負担軽減に役立つサービスが「MIMAMO DRIVE」です。
MIMAMO DRIVEとは
MIMAMO DRIVEとは東京海上スマートモビリティが提供する、車両管理・リアルタイム動態管理サービスです。シガーソケット型端末を車両に搭載するだけで、管理者は車両を一元管理できます。
MIMAMO DRIVEでは、日報の自動化に加えてアルコール検知器の測定結果の写真や数値も、日報と一緒に一元管理する機能を搭載しています。そのほか、リアルタイムでの走行状況をマップで確認できたり、走行距離を自動で記録できたりする便利な機能が多数あります。
「月報・日報を書く時間がない」
「紙媒体で管理していた煩雑な車両の使用状況を効率的に管理したい」
「事故のリスクを減らす効果的な方法が知りたい」
そんなお困りごとを、MIMAMO DRIVEなら解決できます。
ほかにも急ブレーキや急カーブなどの発生地点も確認できる機能があり、運転者に安全運転指導ができるので事故防止にもつながります。
東京海上グループは、お客様や地域社会の“いざ”をお支えするというパーパスを掲げ、100 年以上に わたり自動車保険をはじめとする様々な保険商品を提供してきました。
MIMAMO DRIVEは東京海上グループが長年培ってきた安全に関するノウハウに基づき運転者の走行を数値化し、アドバイス。運転評価やランキング、運転性向上など、安全指導に活用できる機能を搭載しています。
運行管理にMIMAMO DRIVEを導入するメリット
MIMAMO DRIVEは車両管理に関する重要な情報を一元管理できます。
- アルコールチェックの測定結果と日報を一元化
- ペーパーレス化により管理作業時間を短縮
- リアルタイムで位置情報を可視化し、管理業務を効率化
- 運転者の安全運転意識と運転マナーの向上
- 全車両の車検や保険の更新漏れを防止
上記のメリットのほかに、MIMAMO DRIVEは、運転者がスマホから入力可能なところも運転者が漏れなく記録できるポイントです。例えば、スマホからなら直行直帰や出張などで営業所に立ち寄れない場合でも、アルコール検知器による測定結果をその場で日報にあげることができます。とくに遠隔の場合は、紙媒体だと車両に持ち込み忘れたり、紛失したりする恐れがあります。MIMAMO DRIVEなら、遠隔でも運転者が記入したかどうかを確認することができ、記録簿の紛失の心配もいりません。
導入事例
乳製品の卸売販売と小売店舗を営む永島牛乳店様の事例をご紹介します。永島牛乳店様では、取引先への商品の納品用に5台の社用車を保有しています。運転者の自損事故をきっかけにMIMAMO DRIVEを導入しました。
リアルタイムで車両の位置情報を把握できるため、運転者が出発後に追加注文が入った際にも、代わりに動きやすい運転者を見つけて効率よく指示出しができるようになりました。また、納品時間を気にされる取引先へのご案内もスムーズにできており、全体を通じて、管理者の負担削減につながっています。
ガソリンスタンドの運営と燃料の卸販売、ビルメンテナンス業を営む手塚商事様の事例をご紹介します。運転者の日報の手書きによる記載ミスが発生していました。MIMAMO DRIVEの導入により、日報の作成が自動化され毎日の作業時間を30~40分短縮できています。
また、車両管理も車検満了日などは管理表を作成し運用していましたが、台数が多く負担を感じていました。導入後はMIMAMO DRIVEで一元管理し、業務の効率化を実現しています。
- MIMAMO DRIVE 資料紹介
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MIMAMO DRIVEは社有車に関する “経営者” “車両管理者” “運転者”皆様のお困りごとを解決する、 車両管理・リアルタイム動態管理サービスです。サービスの概要や主な機能、活用事例を簡単にご紹介しています。サービスの導入をご検討されている皆様にぜひご覧いただきたい資料になります。
まとめ
今回は、運行管理者という資格や具体的な業務内容、向いている人材についてお話ししました。運行管理者の業務は多岐に渡り、負担を感じる人もいるのではないでしょうか。
運行管理者の資格を持つ人材を採用したいと考えている企業は、記事内で紹介したMIMAMO DRIVEをはじめとする業務負担を減らすサービスの導入をおすすめします。
働きやすい環境を整えることは優秀な人材の離職予防にもつながるでしょう。