アルコールチェッカーは、飲酒運転を防止するために企業で広く利用されています。2023年12月には、一定の要件を満たす場合に企業が使用する白ナンバー車両にもアルコールチェッカーを用いたアルコールチェックが義務付けられ、さらにその重要性が増しています。
しかし、運転前に飲酒していないにもかかわらずアルコールチェッカーが反応するケースがあり、その原因や対策について頭を悩ませる方も少なくありません。
「なぜ飲酒していないのにアルコールチェッカーが反応するのか?」
「誤検知を防ぐためにはどうすればよいのか?」
本記事では、運転前に飲酒していないのにアルコールチェッカーが反応する原因と、その対策について詳しく解説します。企業が適切にアルコールチェックを実施するためのポイントを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
アルコールチェックの実施は重要
アルコールチェックの実施は、企業にとって重要な義務です。もともと緑ナンバー(注1)の車両にはアルコールチェックが義務付けられていましたが、甚大な被害をもたらした飲酒運転事故の発生によって道路交通法施行規則の改正が進められ、2023年12月からは一定の要件を満たす場合に企業が使用する白ナンバー(注2)の車両にもアルコールチェッカーを用いたアルコールチェックが義務化されました。
引用元:道路交通法施行規則 第九条の十第六号(安全運転管理者の業務)
第九条の十 六 運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であつて、国家公安委員会が定めるものをいう。次号において同じ。)を用いて確認を行うこと。
道路交通法施行規則第九条の八により、乗車定員が11人以上の自動車を1台以上使用する事業所またはその他の自動車を5台以上使用する事業所(大型自動二輪車や普通自動二輪車は、それぞれ1台を0.5台として計算)では、安全運転管理者の業務として新たにアルコールチェッカーを用いたアルコールチェックが義務付けられることとなりました。
引用元:道路交通法施行規則第九条の八(安全運転管理者等の選任を必要とする自動車の台数)
第九条の八 法第七十四条の三第一項の内閣府令で定める台数は、乗車定員が十一人以上の自動車にあつては一台、その他の自動車にあつては五台とする。
2 法第七十四条の三第四項の内閣府令で定める台数は、二十台とする。
3 前二項及び第九条の十一の台数を計算する場合においては、大型自動二輪車一台又は普通自動二輪車一台は、それぞれ〇・五台として計算するものとする。
アルコールチェックの義務化は、飲酒運転による交通事故の防止を目的としています。運転前後にアルコールチェックを行い、その結果を記録・保存することで、従業員の飲酒運転を防止することが可能です。
飲酒運転による事故は一瞬で大きな被害をもたらし、企業の信用を失墜させる可能性があります。従業員の安全を守り、企業の社会的責任を果たすためにも、アルコールチェックの徹底は不可欠といえるでしょう。全ての企業がアルコールチェックを適切に実施し、安全運転を徹底することで、飲酒運転による悲劇を防げます。
注1:運送業許可を取得した事業者に交付され、運送業に使用する営業車両に取り付けられる、緑地に白い文字のナンバープレートのこと。
注2:緑ナンバーの車両以外の、自家用車や社用車として利用される自動車に取り付けられる、白地に緑の文字のナンバープレートのこと。なお、黄色ナンバーの軽自動車もここでいう白ナンバーに含まれます。
飲酒していないのにアルコールチェッカーが反応することも!その原因は?
アルコールチェッカーは飲酒運転を防止するための重要な機器ですが、時には飲酒以外のアルコールを検知すること(誤検知)があります。その原因として考えられるのは、以下のとおりです。
- 飲食物
- 喫煙
- 口腔ケア用品
- ケトン体
- アルコールチェッカーの故障や劣化
また、誤検知ではありませんが、前日に摂取したアルコールに反応することもあります。
それぞれの原因について詳しく解説します。
原因1:飲食物
アルコールチェッカーは、微量のアルコールも検知します。そのため発酵食品や栄養ドリンクなど、微量のアルコールが含まれる飲食物を摂取すると、反応を示す可能性があります。反応を示す可能性がある飲食物の例は、以下の通りです。
・発酵食品
発酵食品には、発酵過程で生成されるアルコールが含まれています。そのため発酵食品を食べた直後にアルコールチェッカーを使用すると、アルコールを検知する可能性があります。
代表的な例は、キムチや味噌汁です。また、パン類も発酵食品であり、発酵過程でアルコールが発生するため、アルコールチェッカーが反応する可能性があります。
・洋菓子
洋菓子の製造過程では、ラムやブランデーなどのアルコールを使うことがあります。また、ドライフルーツの洋酒漬けなどを中に練り込むこともあるでしょう。アルコールを含む洋菓子を食べた後にアルコールチェッカーを利用すると、反応を示す可能性があります。
・栄養ドリンク
栄養ドリンクの中には、微量のアルコールが含まれているものもあります。飲んだ直後は口腔内にアルコール成分が残るため、アルコールチェッカーが反応する可能性があるでしょう。
・ノンアルコールビール
ノンアルコールビールと表示されていても、実際には微量のアルコールが含まれていることがあります。そのため、アルコール成分が検知される可能性があります。
上記のように、普段何気なく摂取している飲食物にも微量のアルコールが含まれています。口腔内に残ったアルコールが原因で、アルコールチェッカーが反応する可能性があるでしょう。
原因2:喫煙
喫煙が原因で、アルコールチェッカーが反応する可能性もあります。タバコの煙が直接アルコールチェッカーにかかると、誤検知を起こしやすくなります。
また、喫煙直後に十分な時間をおかずにアルコールチェッカーを使用すると、反応を示す可能性が高まります。喫煙後、正しい計測をするためには、時間を十分に空けてからアルコールチェックを行うことが重要です。
原因3:口腔ケア用品
口腔ケア用品の使用後が原因で、アルコールチェッカーが反応を示す可能性もあります。一部の口腔ケア用品には、アルコールが含まれているからです。
例えば、市販のマウスウォッシュや一部の歯磨き粉には、エタノールが含まれています。また、ミント系のガムにも微量のアルコールが含まれていることがあるため、アルコールチェッカーが誤検知を起こす可能性があります。同様の理由で口臭予防のスプレーやうがい薬の使用には、注意が必要です。
お昼休憩の後に歯磨きをしたり、マウスウォッシュで口をすすいだりする人は口腔ケアをしてから時間をおかずにアルコールチェッカーを使用すると、高いアルコール値が検出されることがあります。使用後はしっかりうがいをする、時間を置いてからアルコールチェックをするといった工夫が必要です。
原因4:ケトン体
アルコールチェッカーが体内のケトン体を検知し、誤検知を起こす可能性もあります。
ケトン体とは、体内で脂肪を分解する際に肝臓で作られる成分です。糖質制限や長期間の断食を行っている人の体内で増加します。持病や体質により、通常よりもケトン体レベルが高いこともあります。
原因5:アルコールチェッカーの故障や劣化
アルコールチェッカーの故障や劣化が原因で、正常に検知できなくなることもあります。長期間使用しているアルコールチェッカーで誤検知が頻発する場合は、故障や劣化の可能性が高いです。機器である以上故障や劣化は避けられないため、定期的な保守点検を行いましょう。
あわせて電源がきちんと入るか、アルコールチェッカーに損傷がないかもチェックしてください。故障していると思われる場合は、早急に新しいものに取り替える必要があります。
また、センサーは経年劣化により性能が低下するため、各メーカーで有効期限もしくは使用回数が定められています。劣化したセンサーは正確な検知ができなくなるため、必ず期限前に交換するか、新しいものに買い換えましょう。
前日に摂取したアルコールを検知することも
前日に摂取したアルコールが原因で、アルコールチェッカーが反応を示すことがあります。アルコールは、摂取後すぐに体外に排出されるわけではありません。分解には一定の時間がかかるため、夜遅くまで飲酒したり飲酒量が多かったりすると、翌日までアルコールが残ることがあります。したがって飲酒する際は、翌日の予定も考慮して摂取量を調整することが重要です。
なお、国土交通省の資料には、アルコールの分解所要時間について、以下の通り記載されています。
引用元:飲酒に関する基礎教育資料(アルコールの基礎知識(分解所要時間))
アルコールの分解に要する時間については諸要素によって変動します。したがって下記の数字は目安として確認ください。
アルコールの分解速度は、性別・年令・体重・体質、疲労・体調等でも変わり、また睡眠中は処理が遅くなります。肝臓の大きさ等の要素を背景に、女性よりも男性の方が、年輩の人よりも若い人の方が、アルコール分解能力が高いとされ、体重の重い人と軽い人が同量のお酒を飲んだ場合、重い人の方が血中アルコール濃度が低くなるため、酔いにくいといえます。
以上の諸要素を勘案した上で、アルコールの分解能力は、1時間当たりアルコール4グラムと計算しておけば、検知器で検出される可能性は殆どないと言われています。飲酒後に水をたくさん飲んでも、アルコールの分解速度が早まることはありません。
アルコールの分解能力は、あくまで目安です。実際には個人によって大きく異なります。例えば、年齢が低いほどアルコールの分解能力が高いというのが一般的ですが、肝機能の問題や体重などが影響し、実際にはアルコール分解能力が低いこともあります。
また、体調によっては分解能力が下がり、少量の飲酒でも体内にアルコールが残ることも考えられるでしょう。翌日に運転を控えている場合は、前日の飲酒量を抑える、早めにきりあげる、飲酒そのものを控えるといった工夫が必要です。
アルコールチェッカーの誤検知を防ぐための対策
アルコールチェッカーの誤検知を防ぐには、対策を講じることが重要です。具体的には、以下4つの対策を行いましょう。
- うがいをする
- 時間を置いてから再チェックする
- 換気をする
- アルコールチェッカーを掃除する
それぞれの項目について、具体的に解説します。
対策1:うがいをする
アルコールチェッカーを使用する前にうがいをすることは、誤検知を防ぐ有効な対策の一つです。なぜなら口腔内に残るアルコール成分や一酸化炭素などは、うがいをすることで除去できるからです。特に飲食物を口にした後や喫煙後、歯磨き粉・マウスウォッシュの使用後には、うがいを行うことでアルコールチェッカーの誤検知を防げます。うがいをする際には真水を使用しましょう。
朝の通勤前や業務開始前などにうがいを行うことで、誤検知のリスクを大幅に減らせます。アルコールチェッカー使用前のうがいを習慣化することで、安心して業務に従事できるでしょう。
対策2:時間をおいてから再チェックする
アルコールチェッカーが誤検知を起こした場合は、時間を置いてから再チェックしてください。食事や喫煙、口腔ケア用品の使用が原因による誤検知であれば、時間をおくことでアルコール成分が自然に消えていきます。この間にうがいを行うことで、さらに正確な測定ができます。
普段からアルコールチェックは、食事や喫煙、口腔ケア用品の使用後に時間を置いてから行うのが望ましいです。上記行為の直後は、誤検知の原因となる成分が口腔内に残っている可能性が高いからです。
昼食後や休憩後にアルコールチェックを行う場合は、業務開始時間から逆算し、時間が空くように調整しながら食事や喫煙、口腔ケアなどを行うとよいでしょう。
対策3:換気をする
アルコールチェッカーの誤検知を防ぐ対策として、「換気」があります。先にお伝えしたとおり、アルコール成分が空気中に漂っていると、アルコールチェッカーが反応を示すことがあるからです。
空気中のアルコールが原因による検知を防ぐため、検査前には室内の空気を入れ替えるようにしましょう。特にアルコール消毒液や、アルコールを含む芳香剤を使用している場所では、窓を開けたり換気扇を使用したりして、念入りに換気を行いましょう。
換気によって空気中のアルコール成分が排出されれば、正確な測定ができます。オフィス内でも車内でも、十分な換気を徹底することが重要です。
対策4:アルコールチェッカーを掃除する
アルコールチェッカーを正確に機能させるためには、定期的な掃除とメンテナンスが欠かせません。センサー部分の汚れや臭いの付着は、誤反応の原因になるからです。正確な測定をするためにも、適切な方法で掃除を行いましょう。
センサー部分を掃除するときは、柔らかい布を使って優しく拭き取ります。アルコールや洗剤、熱湯などの使用はセンサーの性能に影響するため、使用を避けてください。誤検知が発生するリスクを高めます。なお、メーカーによっては専用のクリーナーが販売されています。適切に使用することで、センサーの感度を適切に保てるでしょう。
センサー部分の臭いを除去するには、通気性のよい場所に保管したり、保管ケースに活性炭シートを入れたりする方法があります。具体的なお手入れの方法はアルコールチェッカーによって異なるため、各メーカーの取扱説明書にしたがって、適切な方法で掃除を行ってください。独自の方法でお手入れをすると故障の原因になるため、必ず取扱説明書を確認することが重要です。
アルコールチェッカーを適切に掃除し、法令に基づいた点検を行うことで、誤検知のリスクを減らすことができます。正確な測定を維持するためにも、日々の点検を徹底することが重要です。
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まとめ
アルコールチェッカーの誤検知はさまざまな要因で引き起こされます。具体的には食事や喫煙、口腔ケア用品、ケトン体、機器の故障や劣化などが原因です。しかし、正しい対策を講じれば、誤検知のリスクを減らすことができます。本記事で紹介した原因を理解し、ぜひ対策を実施してください。
また、企業はアルコールチェッカーの正確な管理とメンテナンスを行うことも重要です。定期的なチェックと記録の保存は、従業員の飲酒運転を防いだり交通事故のリスクを軽減したりするほか、法令遵守のためにも必要と認識しておきましょう。アルコールチェッカーの正確な運用と適切な対策を実行することで、企業の信頼性が向上し、社会全体の安全性が高まります。
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